アイルランドへの旅行や留学・ワーホリ、移住などを検討する際、現地の治安が気になる方も多いのではないでしょうか?
一般に、アイルランドは「治安がいい国」とされています。実際、筆者もワーホリ滞在中に危険を感じたことは少なく、「治安は比較的よい」と感じました。
本記事では、その裏づけとして、世界的な指標やランキングのほか、アイルランド中央統計局や警察庁などの公式データをもとにアイルランドの治安を徹底検証します。
渡航前にアイルランドの治安を正しく理解し、現地で安心・安全に過ごすための参考にしてください。
アイルランドの治安は?ランキング&データで解説

アイルランドの治安について詳しく見るため、ここでは次の4つのデータを参照します。
- 世界平和度指数
- アイルランド中央統計局の犯罪件数データ
- 日本の警察庁の犯罪件数データ
- NumbeoのCrimeデータ
それぞれの指標やデータごとに、以下で詳しく解説します。
世界平和度指数で見るアイルランドの治安
治安を評価する指標のひとつに「Global Peace Index(世界平和度指数)」があります。
オーストラリアのシンクタンク「Institute for Economics & Peace(IEP / 経済平和研究所)」が毎年発表しているもので、世界の163の国や地域を対象に、平和度をスコア化し、ランキングにしているものです。
直近5年のアイルランドと日本の順位を抜き出してみると、以下のようになります。
アイルランドの順位 | 日本の順位 | |
---|---|---|
2024年 | 2位 | 17位 |
2023年 | 2位 | 13位 |
2022年 | 4位 | 13位 |
2021年 | 2位 | 14位 |
2020年 | 8位 | 13位 |
アイルランドは毎年トップ10にランクインしており、ここ数年はアイスランドに次いで2位を維持しています。
ただし、この結果だけで「アイルランドは治安がよい」とするのは安易といえるかもしれません。
というのも、Global Peace Indexは、大きく分けて以下の3つの観点で各国の評価をしているからです。
- 社会的安全と安心のレベル
- 継続中の国内・国際紛争の度合い
- 軍事化の度合い
2024年のレポートには「日本は軍事化に関する全指標で悪化し、ランキングが下がった」という旨の報告があり、軍事や外交の要素もスコアに大きく影響していることがわかります。
そうなると、実際に現地で暮らす人が感じる「日常の治安」とは少しズレがある可能性があります。
中央統計局と警察庁のデータで見るアイルランドの治安
より日常に近いところを検証するため、今度はアイルランドと日本の犯罪件数の比較をしてみます。ただし、比較にあたり、下記の注意点があります。
- 国ごとに犯罪の定義や分類の違いがある
- 実際の犯罪報告数に差が出ていることがある
- データの収集方法や時期により差が出ることがある
アイルランドと日本のデータを単純に比較することはできませんが、目安としてアイルランド中央統計局(CSO)のデータを見ると、2024年の犯罪件数は下記のように確認できます。
(※10万人あたりの件数はアイルランド人口を530万人として計算)
犯罪種別 | 発生件数(2023年との比較) | 10万人あたりの件数 |
---|---|---|
殺人および関連犯罪 | 77件(13%減) | 約1.45件 |
強盗・恐喝・強奪および関連犯罪 | 2,353件(10%減) | 約44.4件 |
規制薬物関連犯罪 | 16,119件(7%減) | 約304件 |
窃盗および関連犯罪 | 76,178件(3%増) | 約1,437件 |
一方、日本の警察庁のデータを見てみると、2024年の犯罪件数は下記のようになります。
(※10万人あたりの件数は日本人口を1億2,400万人として計算)
犯罪種別 | 発生件数(認知件数) | 10万人あたりの件数 |
---|---|---|
凶悪犯 (殺人、強盗、放火、不同意性交など) | 7,034件 | 約5.7件 |
粗暴犯 (暴行、傷害、脅迫・恐喝など) | 5,7746件 | 約46.5件 |
窃盗犯 (侵入盗、乗り物盗・万引きなど) | 501,507件 | 約404.4件 |
分類や集計方法の違いがあるものの、目安として見ると、アイルランドは日本に比べて一部の犯罪(窃盗や薬物関連など)の発生率が高い傾向にあることがわかります。
ただし、「殺人」や「強盗・恐喝」などでは、日本と大きな差があるわけではありません。
アイルランドは全体として日本よりも犯罪発生率が高い側面がある一方で、過度に不安視する必要はなく、日常的な防犯意識をしっかり持つことが大切だといえるでしょう。

外務省のアイルランドについての安全情報では、ギャングの抗争や少年少女の不良グループによる外国人への暴行・恐喝についての注意喚起があります。現地滞在中は、そうしたグループに近づかないよう注意することも大切です。
Numbeoで見るアイルランドの治安
視点を変えて、今度はNumbeoのデータを見てみます。
「Numbeo」とは、世界中のさまざまな国や地域の物価や地価、治安などに関するデータを収集・公開しているオンラインデータベースです。
アメリカの新聞「The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)」やイギリスの公共放送「BBC」がNumbeoのデータを引用した例があり、公開されているデータは参考情報として活用できると考えます。
Numbeoで公開されているアイルランドと日本の「Safety Index(安全指数)」と「Level of crime(犯罪レベル)」は以下の通りです。
(※安全指数は高いほど安全を意味し、犯罪レベルは低いほど安全に近いことを意味します。)
アイルランド (Numbeoで詳しく見る) | 日本 (Numbeoで詳しく見る) | |
---|---|---|
安全指数 | 51.39(中程度) | 77.14(高い) |
犯罪レベル | 52.01(中程度) | 19.23(非常に低い) |
こうして数値で見ると、日本の治安は世界的にとても高く評価されていることがわかります。
一方、アイルランドは日本に比べると犯罪レベルが高めに見えますが、世界全体の中では「中程度」の安全性に分類される水準です。
そのため、アイルランドは「比較的安全な国」ではあるものの、日本と同じ感覚で過ごすのではなく、防犯意識をしっかり持って行動することが大切だといえるでしょう。

ちなみに、アイルランドは北アイルランドとの紛争の歴史もあり、「テロ」を心配する方も多いと思います。
外務省の「テロ・誘拐情報」には、「近年、アイルランドではテロ事件は発生していません。」という文言があります。
今後テロは起きないと言い切る根拠とはなりませんが、比較的心配は少なそうだといえそうです。
アイルランド国内の地域別の治安は?

アイルランド全体の治安を見てきたところで、今度はアイルランド国内の地域別の治安についても見ていきます。
以下の2つの点から国内の治安情報を読み解きます。
- アイルランド国内の治安ランキング
- ダブリンの危険なエリア
以下でそれぞれ詳しく解説します。
Numbeoで確認!アイルランド国内の治安ランキング
Numbeoのデータをもとに、アイルランド国内の主要都市の治安をランキングにして紹介します。
Numbeoで公開されている各都市の「Safety Index(安全指数)」にもとづき、治安が良い順に並べたのが以下のランキングです。
順位 | 都市名 | 安全指数 | 参照ページ |
---|---|---|---|
1 | ゴールウェイ | 68.75 | Numbeoで見る |
2 | コーク | 63.06 | Numbeoで見る |
3 | リムリック | 56.66 | Numbeoで見る |
4 | ウォーターフォード | 51.56 | Numbeoで見る |
5 | ダブリン | 46.02 | Numbeoで見る |
一般的に、人口が多い都市ほど犯罪発生率が高くなりやすい傾向があり、ダブリンの順位が低いのは、その影響と考えられます。
比較として、日本の都市やヨーロッパの主要都市の指数を見ると以下のようになります。
都市名 | 安全指数 |
---|---|
東京 | 74.97 |
大阪 | 67.68 |
福岡 | 83.94 |
パリ(フランス) | 41.90 |
ベルリン(ドイツ) | 55.34 |
ローマ(イタリア) | 52.18 |
ロンドン(イギリス) | 44.66 |
世界的に治安がよいと評価される日本は安全指数が高く出ていますが、ヨーロッパの主要都市では40〜50台のところが多いとわかります。
つまり、ダブリンは都市の規模に応じたリスクもあるものの、ほかのヨーロッパの大都市と比べれば特段危険というわけではないようです。
ダブリンの治安?危険なエリアは?

アイルランドのなかでも特に旅行や留学に人気のダブリンの治安について、もう少し詳しく見ていきましょう。
ダブリンの市街地は1〜24の番号でゾーン分けされ、住所は「Dublin 1」「Dublin 2」「Dublin 3」のように表記されます。(※番号は単純に1〜24まであるわけではなく、「Dublin 6W」のような住所もあります。)
市の中心を流れるリフィー川を境にダブリンは北側と南側に分けられ、Dublin 1やDublin 9などの奇数番号が北側、Dublin 4やDublin 12などの偶数番号が南側に位置しています。
一般的には南側の方が治安がよいとされていますが、北側にも安全な地域はあり、南側にも注意が必要なエリアがあるのが実情です。
たとえば、下記のエリアは犯罪の発生件数が比較的多いとされ、注意が必要といわれています。
- Dolphin’s Barn (Dublin 8)
- Inchicore (Dublin 8)
- Tallaght (Dublin 24)
滞在先や住居探しでは、できるだけこれらのエリアを避けるようにしたほうがよいでしょう。
下記のマップは、フードデリバリーサービス「Deliveroo」のドライバーがまとめた危険エリアマップです。2021年に作成されたものではありますが、マップを参考に各エリアの安全情報を事前に確認するのをおすすめします。

ワーホリ時代はDublin 7のPhibsboroughに住んでいました。夜間の一人歩きは控え、周囲に注意を払えば、比較的穏やかに過ごせるエリアでした。
同じ地域内でも少しズレただけで住みやすい場合もあります。
アイルランドへの女性一人旅は安全?

さまざまなデータをもとにアイルランドの治安について見てきたところで、女性が一人旅する場合の安全性についても簡単に紹介します。
荷物預かりサービスを展開するBounce社が2022年に発表した「女性一人旅の安全性調査」で、アイルランドはランキングでトップとなりました。
調査では、一人歩きで安全を感じる度合いに加えて、女性の暴力被害率、DVに関する法律に対する評価、世界男女格差指数スコアなどを含めた、計8つの項目で安全性を評価しています。
調査の結果から、アイルランドは女性も比較的安心して旅行ができるといえそうですが、夜間の一人歩きを避けたり、初対面の人にむやみについていかないようにしたりするなど、リスクを避ける意識を持つことが大切です。
アイルランドで安全に過ごすための対策

さまざまなデータをもとにすれば、アイルランドは比較的「治安がいい国」であるといえそうですが、日本と比較すれば、気をつけるべき点は多くあります。
これからアイルランドに行くなら、下記のような備えをして安全対策をしましょう。
- たびレジに登録しておく
- 防犯意識を高く持っておく
- 海外旅行保険で備えておく
以下でそれぞれ詳しく解説します。
たびレジに登録しておく
アイルランドに限らず、海外へ行く予定がある場合は、「たびレジ」への登録がおすすめです。
「たびレジ」は外務省が提供するサービスで、登録しておけば現地の事件や事故の情報、注意喚起のお知らせをメールで受け取れるようになります。
>> たびレジ

アイルランドでの滞在が3ヶ月を超える場合は、在留届の提出が義務付けられています。在留届は、外務省が海外で暮らす人の情報を把握するだけでなく、緊急時の支援のために必要な資料とされています。
留学やワーホリで渡航する人は、たびレジへの登録に加えて、在留届を提出しましょう。
>> オンライン在留届(ORRネット)
防犯意識を高く持っておく
防犯のため、現地滞在中は下記のポイントを押さえておきましょう。
- 財布は分けて持っておく
- バッグはファスナー付きにし、貴重品は内ポケットに入れる
- こまめに荷物をチェックする
- 貴重品を置いたまま席を離れない
- 夜に1人歩きしない
- 不審な人と居合わせたらできるだけ早くその場を離れる
- 落書きの多いエリアを避ける

より詳しい対策については、在アイルランド日本国大使館の「安全の手引」も参考にしましょう。
海外旅行保険で備えておく
防犯意識を持っていても、スリや置き引きなどに遭遇してしまうこともあります。
留学やワーホリでの渡航なら保険加入は必須ですが、旅行の場合も海外旅行保険に入っておくことで、万一のときに経済的な負担を減らせる可能性があります。
クレジットカード付帯の保険でも携行品の盗難や破損などの損害補償がついている場合もあり、渡航前に保険の利用条件とあわせて確認しておくと安心です。
たとえば、エポスカード なら、全体の補償額がほかのクレジットカードよりも高く、無料で持てるカードなので、渡航前に準備しておくのにおすすめです。

アイルランドの治安情報を確認して備えよう

アイルランドは世界的に見れば「治安のよい国」ではありますが、日本と比べれば犯罪発生件数が多く、防犯意識を高くもつ必要があります。
本記事で紹介した安全対策も参考にして、現地で安心して過ごせるよう、あらかじめ心構えをしておきましょう。
【参考文献一覧】
コメント