- 聖パトリックは何の人?
- レプラコーンって何?
- クー・フーリンって誰?フィン・マックールって誰?
アイルランドの世界にどっぷり浸かると、神話や伝承の世界もアイルランド文化とは切り離せないものだとわかります。
アイルランドだけでなく世界中でお祝いされるセント・パトリックス・デーも、名前の通り、聖人・聖パトリックに由来するもの。アイルランドのお土産品や企業ロゴなどで使われるキャラクターも、追っていくと神話や伝承の登場人物に由来していることが多くあります。
ここでは、アイルランドの神話・民話にも興味が湧いてしまったたびわ(@tabi_wa)が、たくさんいる神話・伝承の登場者たちの中でも、特に押さえておくべきもの(妖精)たちを紹介します!あなたはいくつ知っているでしょうか?
レプラコーン
アイルランドは「妖精の国」と言われますが、レプラコーン(Leprechaun)はその中でも最もよく知られている妖精の1つです。アイルランドのマスコット的な要素もあり、お土産品のキャラクターとしても多く使われています。
親近感を持たせるためか、ずんぐりむっくりなかわいいおじさんといった姿で表現されることが多いですが、伝統的には背の高い老人の妖精と言われているそうです。靴屋妖精のレプラコーンは、金貨の入った壺を虹のふもとに隠していると言われており、彼らを捕まえれば金のありかを教えてくれるとか。
ただ彼らはとっても逃げ足が速いようで、いたずらを仕掛けてすぐ消えてしまうらしいです。
『ハリーポッターと炎のゴブレット』でもクィディッチのワールドカップでアイルランドチームのマスコットとして登場しているのもこの妖精です。
アイルランドには「Leprechaun Crossing(=レプラコーン注意)」の道路標識もあるほど。ぜひ一度は現地で見てみたいですね。
聖パトリック
聖パトリック(St. Patrick)はアイルランドにキリスト教を広めた人物。キリスト教の「三位一体」をシャムロック(3つ葉のクローバー)の3枚の葉に当てはめて説いたとされ、それによりシャムロックが国のシンボルとなったという説もあります。
アイルランドにヘビがいないのも、聖パトリックが全てのヘビを海に追いやったからとも言われています。
3月17日は聖パットリックの命日で、セント・パトリックス・デーは、彼をたたえ、国をあげてお祝いする日というわけです。
クー・フーリン
クー・フーリン(Cú Chulainn)はケルト神話の中でも人気の英雄です。(カタカナでクー・フーリンと言うと100%アイルランド人には通じません・・笑)
太陽神の父と人間の母を持つ半神半人のクー・フーリンの名前は「クランの猛犬」の意味で、クラン王の番犬を殺してしまい、自分が番犬の代わりをすると申し出たことに由来します。
半神半人の彼は、初の襲撃で気がたかぶり、おぞましい姿を見せたこともあります・・
頭の先からつま先までが、流れの早い小川の蒲の葉のように震えだし、首の筋肉がのたうつヘビがとぐろを巻くように盛りあがる。片方の目は深く落ちくぼみ、もう片方の目は飛び出す。体から火炎を発し、口からは子羊の綿毛のような泡を吹く。(中略)そして頭のてっぺんからは黒い血が吹きだし・・・
『ケルト神話ファンタジー 炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』より引用
・・もうカオスな姿なのですが、彼の物語では、彼の恋愛模様や友情が描かれたり、先陣を切って自分の軍を勝利に導いたりする様子が描かれ、破天荒さと人情味溢れる様子になぜか引き込まれてしまいます。他の女性に目移りする姿も描かれつつ、結局は妻・エウェルを大事にしているところなんかも推しポイントです。
槍の使い手であるクー・フーリンは最期、倒れて死ぬのではなく、立った状態で死のうと弱った体を自ら石柱にくくりつけ絶命します。アイルランドの首都・ダブリンの中央郵便局(GPO)には、この最期の場面を描いた彫像があります。
クー・フーリンは、敵との約束も守り、正々堂々戦う気高い英雄でした。その気高さが今も多くの人から愛される理由の一つなのかもしれません。
フィン・マックール
フィン・マックール(Fionn mac Cumhaill)も、クー・フーリンと同様に多く語られるケルト神話の戦士です。
クー・フーリンの物語は、北アイルランドを舞台に、一つの大作といった感じに話が展開していきますが、フィンの物語はアイルランドの少し南に舞台が移り、妖精が登場したり、時間感覚も時に大雑把になったりして、語り部たちによって作り出された物語といった感じがします。
フィン・マックールの伝説で一番よく知られているものでは、知恵の鮭の話があります。フィンはボイン川の知恵の鮭・フィンタンの調理を僧侶から頼まれ、決して鮭を食べてはならないと言い渡されるのですが、油が跳ねてやけどした親指を舐めたために、言いつけをやぶって鮭を食べたことになってしまいました。
それ以来、フィンが親指を舐めれば、未来を見通したり、遠く離れた地の出来事を知れたりするような力が備わったのでした。
その他にも、フィンの息子・オシーンがフィンの元にやってきた時の話など、かなり引き込まれるエピソードがあります。
フィンは、白い肌と美しい金髪のイケメンとして描かれますが、ある時に魔法がかかったままとなり、髪が銀髪になったという話もあります。
アイルランド最強の騎士団・フィアナ騎士団の団長である彼もまた型破りなところがあり、無茶をしがちですが、騎士団全員からの信頼も厚く、優れた指揮力と強さから人気を集める英雄の一人です。
巨人
特に個別の名前があるわけではないのですが、「巨人」もアイルランドの神話・伝承に多く登場します。
北アイルランドの有名観光地「ジャイアンツ・コーズウェイ(Giant’s Causeway)」は別名「巨人の石道」。
実はこの場所はフィン・マックールともゆかりがあり、巨人フィン・マックールがスコットランドのベナンドナーと戦うため「巨人の石道」を作ったと言われています。
*この伝承も語り部たちが編み出したものなのか、フィンが「巨人」として登場するバージョンのようです・・
伝説では、巨人フィンが石道を渡り、ベナンドナーの元へ行くのですが、ベナンドナーが自分より大きいと知ると、フィンは赤ん坊に扮することで、その父親はもっと大きいと思わせてベナンドナーを怖がらせたとされています。
現地ビジターセンターでは「フィンの伝説」の動画を部公開しています!
ぜひ現地でフルバージョンを見て欲しいです!
この他にもアイルランドの伝承には多くの巨人が登場し、巨人との戦いの様子などが描かれます。
巨人が登場する話をいくつか読んでみたい人には、『アイルランド 民話の旅』がおすすめです。
セルキー
妖精の国・アイルランドには、レプラコーンの他にもたくさんの妖精種族が存在し、セルキー(selkie)もその種の一つ。
アザラシから人間の姿に変身するとされており、『オンディーヌ 海辺の恋人』や『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』といった映画作品はこれをモチーフにしています。
普段は海の中にいる彼らは、陸に上がる時はアザラシの皮を脱ぎ人間となります。男性・女性のセルキーがいるらしく、男性の方は女性の誘惑が得意とか。
人間の男性が女性セルキーの脱いだ皮をとってしまうと、セルキーは男性の妻になりますが、皮を見つけると彼女たちは海に帰ってしまうんだそう。これらの話を知って関連映画を見るとおもしろいですよ!
バンシー
もう一つ、アイルランドの代表的な妖精にバンシー(banshee)がいます。
バンシーは人の死を予告する妖精で、美しい女の姿で血まみれの服を洗っているといった様子で目撃されたりします。バンシーの泣き声が聞こえた家では近いうちに死者が出るとも言われているようです。
クー・フーリンの戦いのシーンでもバンシーの奇声が聞こえてきたり、クー・フーリンの死の直前に姿を現したりもします。
日本では、「遊戯王」や「ヴァンガード」といった対戦型カードゲームのカードにバンシーが使われていたりもするようです。
神話と伝承から今に広げて・・
最近はFGO(Fateシリーズ)のようなゲームでも神話の登場人物が注目されたりもしているようですが、他にもたくさんのゲームやマンガ、映画などでこれら登場人物や妖精たちがモチーフにされています。神話や伝承を知っていると、モチーフとして扱っている作品の楽しみが増えるだけでなく、アイルランドに観光に行くにも深みが出ます。
(個人的には今、クー・フーリンが命を落としたとされるアイルランド北部の岩を絶対に見に行きたい!)
何より、伝説や伝承には、アイルランドの人たちが古くから大事にしてきた思想や精神が隠れているよう。最初は小さな興味からでもいいので、ぜひ神話・伝承の世界に浸ってみてはいかがでしょう?
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