アイリッシュウイスキーを語るうえで欠かせない「シングルポットスチル」。
「ポットスチル(単式蒸留器)」はシングルモルトにも使われるため、「シングルモルトと何が違うの?」と混乱したことはありませんか?(筆者はしました…)
本記事では、アイリッシュウイスキーの特徴の1つとされる「シングルポットスチル」について詳しく解説します。
混乱しやすい「シングルモルト」との違いや、シングルポットスチルのおすすめ銘柄も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
シングルポットスチルとは?シングルモルトとの違いは?
「シングルポットスチル」とは、アイルランドの伝統製法で造られたウイスキーのことです。
混乱しやすい「シングルモルト」との違いも示すため、まずは「ポットスチルウイスキー」と「モルトウイスキー」を比較すると、下記のようになります。
ポットスチルウイスキー | モルトウイスキー | |
---|---|---|
原料 | モルト(大麦麦芽)と未発芽の大麦、オート麦、小麦、ライ麦など | モルト(大麦麦芽)のみ |
製法 | ポットスチルと呼ばれる単式蒸留器で2〜3回蒸留 | ポットスチルと呼ばれる単式蒸留器で2回蒸留 (アイルランドでは3回蒸留の場合が多い) |
1つの蒸留所でできた「ポットスチルウイスキー」と「モルトウイスキー」のみをそれぞれ瓶詰めすると、「シングルポットスチル」と「シングルモルト」が出来上がります。

単式蒸留器の呼び名が「ポットスチル」であるせいでちょっと混乱しやすいですが、「ポットスチルウイスキー」または「シングルポットスチル」と言うときは、「未発芽の大麦を使ったアイルランド伝統のウイスキー」を指していると理解しておけばよいでしょう!
アイルランドでもモルトウイスキーを作っていますが、ポットスチルウイスキーはアイルランドならではのものです。
ちなみに、異なるタイプのウイスキーを混ぜ合わせる「ブレンデッドウイスキー」は、アイルランドでは、以下の組み合わせで造られます。
- モルトウイスキー + グレーンウイスキー※
- ポットスチルウイスキー + グレーンウイスキー※
- モルトウイスキー + ポットスチルウイスキー + グレーンウイスキー※
※グレーンウイスキーは、トウモロコシや小麦などの穀類を主原料とするウイスキー
シングルポットスチルウイスキーの味・特徴
シングルポットスチルウイスキーの味わいの特徴は、オイリーなフレーバーとライトななめらかさ。
オイリーなフレーバーは、未発芽の大麦や穀物を混ぜていることによるものと考えられています。

そもそも未発芽の大麦を使うようになった背景には、大麦麦芽に高い税金(モルト税)がかけられたことがあるようです。
また、かつてはスチルサイズが大きいほど税金が安くなるという優遇措置があったため、正規業者の多くは大型のポットスチルを使用してウイスキーを製造していました。
スチルサイズや、アイリッシュウイスキーの特徴である3回蒸留が、軽くなめらかな口当たりにつながっていると考えられています。
シングルポットスチルウイスキーのおすすめ5銘柄
ポットスチルウイスキーの味わいを楽しめるアイリッシュウイスキーを5つ紹介します。
1. バスカー シングルポットスチル
まず紹介するのは、人気急上昇中のアイリッシュウイスキー「バスカー」です。
バスカーを製造するロイヤルオーク蒸留所は、アイルランドで唯一「シングルモルト」「シングルポットスチル」「シングルグレーン」の3種のウイスキーを製造できる蒸留所。
「バスカー シングルポットスチル」は、そんなロイヤルオーク蒸溜所の「シングルポットスチル」にスポットを当てた商品です。
2. ジェムソン シングルポットスチル
アイリッシュウイスキーの代表的ブランド「ジェムソン」にもシングルポットスチルがあります。
バーボン樽とシェリー樽に加えて、アイリッシュオーク、ヨーロピアンオーク、アメリカンオークの3種のバージンオーク樽を使っているのが特徴です。
「ジェムソン シングルポットスチル」は2023年12月のリリース以降、オンライン限定で販売されています。
3. ティーリング シングルポットスチル
「ティーリング シングルポットスチル」は、大麦麦芽(モルト)50%、未発芽大麦50%を3回蒸留したウイスキーです。
4. グリーンスポット
青りんごのような味わいが魅力の「グリーンスポット」もシングルポットスチルウイスキーです。

黄色のカラーの「イエロースポット」もシングルポットスチルで、ハニーな香りが広がります。
5. レッドブレスト 12年
「レッドブレスト」はシングルポットスチルのウイスキーブランド。
「レッドブレスト 12年」は、ブランドのなかではスタンダードボトルです。
シングルポットスチルウイスキーを味わおう

ポットスチルウイスキーはアイリッシュならではの製法のウイスキーです。
ぜひお気に入りの銘柄を求めて、さまざまな味を楽しんでみてください。
【参考文献】
『理由がわかればもっとおいしい!ウイスキーを楽しむ教科書』
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