アイルランドの歴史映画と言えば、『マイケル・コリンズ』があります。1916年〜1922年のイースター蜂起(Easter Rising)からアイルランド独立戦争の時代を描いた作品で、リーアム・ニーソンが主演を務めました。
ここでは、アイルランドが大好きすぎるたびわ(@tabi_wa)が、映画『マイケル・コリンズ』のストーリーをなぞりながら、ダブリンの名所を紹介します。
『マイケル・コリンズ』で知るダブリン
『マイケル・コリンズ』には、ダブリンのさまざまな名所が登場し、実際にダブリンに行った時にも発見を得ることができるシーンがたくさんあります。
GPO(中央郵便局)
『マイケル・コリンズ』は冒頭2分、1916年のイースター蜂起の場面から本編がスタートします。激しい銃撃戦が行われたのはダブリン中心部のランドマークGPO(General Post Office)です。
映画に登場したGPOは撮影用のセットとして作られたものらしいですが、現地アイルランドの、本物のGPOの柱には今でも実際のイースター蜂起での弾痕の跡が残っています。
キルメイナム刑務所(Kilmainham Gaol)
マイケルたちが捕まり、首謀者として名前を呼ばれた人物たちが射殺されてしまった場所はキルメイナム刑務所です。
イースター蜂起の時代のことを描いた歴史小説『ケルト人の夢』なんかも読んでおくと、このシーンで呼び出される人物のことが少しわかります。
マーシュ図書館(Marsh’s Library)
マイケルが、内部情報ファイルの保管室に入れるようにとダブリン市警察のブロイと交渉した場所は、マーシュ図書館です。
聖パトリック大聖堂の裏手にあるこの図書館は、1707年開館。300年以上の歴史があります。(マイケル・コリンズの時代が1916年ごろなので、時系列にも合っていますね。)
マーシュ図書館はたびわのリストでもマーク中です・・
ハーペニーブリッジ(Ha’penny Bridge)
マイケルがファイル保管室での危機をなんとか切り抜けたところで、場面の切り替えで登場するのはハーペニーブリッジ。
昔、橋の通行料として半ペニー(ハーフ・ペニー)を徴収していたことがこの橋の名前の由来だそうです。ダブリンを南北に分けるリフィー川にかかるこの橋は、観光名所としても有名でアイコニックな橋となっています。
クロークパーク(Croke Park)
イギリススパイ組織のメンバーが次々に殺害された中、悲惨な事件が起こったのはダブリンの北に位置するクロークパークです。(画面の切り替わりで「Páirc an Chrócaigh」とアイルランド語表記でパークの名前も出てきています。)
アイルランドの伝統スポーツであるゲーリックフットボールの試合中に急に戦車が入ってくるという悲惨なシーンでした。この出来事は血の日曜日事件(Bloody Sunday)と呼ばれています。
イースター蜂起後、釈放されたマイケル・コリンズが街中で演説するシーンでは、アイルランド警察隊との乱闘シーンで、棍棒代わりの武器としてアイルランドの伝統スポーツ「ハーリング」のスティックを使っている人もいます。
ゲーリックフットボールやハーリングなど、アイルランドのスポーツ文化も映画に色濃く出るものです。
「血の日曜日事件」と名付けられた出来事は、時が進み1972年にも起こります。これは、アイルランドと北アイルランドの国境付近、デリーで起こったものでした。
>> 関連記事:アイルランド映画『プルートで朝食を』あらすじ〜演出・北アイルランド問題まで
カスタム・ハウス(The Custom House)
アメリカから帰国したエイモン・デ・ヴァレラは、マイケルのやり方に反対し、カスタム・ハウスを攻めると宣言します。その後すぐ映るカスタム・ハウス周辺の戦闘シーンでは、聖パトリック大聖堂も一緒に写り込んでいますね。
カスタムハウスのあたりは、現在では、多くの長距離バスが停まる場所になっています。
ダブリン城 (Dublin Castle)
作中で何度か登場するダブリン城は、1922年までイギリスの総督府が置かれており、最後にはイギリス国旗が降納されます。
国旗降納の際、7分の遅刻を指摘されたマイケル・コリンズの「700年待ったんだ、7分は待て」というセリフ(名言?)が印象的です。
フォー・コーツ(The Four Courts)
条約に反対したグループが占拠したのは、アイルランドの最高裁判所であるフォー・コーツでした。
どうしても内戦を避けたかったマイケルでしたが、最終的にはフォー・コーツを砲撃します。これにより内戦が本格化してしまったのでした。
『マイケル・コリンズ』で観るアイルランドの文化
先に紹介したように、作中にはアイルランドの伝統スポーツに関連するシーンがあったりしますが、他にもアイテムや言葉なんかにアイルランドらしさがたくさん表されています。
泥炭(Turf)
武器代わりに火をつけた泥炭を使うシーンも登場します。アイルランドの文学作品なども読んでみると泥炭がよく登場し、アイルランドでは身近なものだったとわかります。
Grand (大丈夫)
アイルランド英語をまとめた記事でも触れていますが、アイルランドでは「grand(=大丈夫)」がよく使われます。作中でマイケル・コリンズもよくこの言葉を使っています。(美しい言葉ではないですが「gobshite」も聞こえますね。)
gobshiteが気になる方はこちらを・・
パブとフィドル
デ・ヴァレラに会いにコークに着いたマイケルは仲間を引き連れパブに入ります。仲間の1人がフィドル(バイオリン)の演奏を始め、わいわいとしたパブの感じが映りますが、その光景がなんともアイルランドらしいです。
このフィドルを弾いてるのはブレンダン・グリーソンで、ハリーポッターでマッドアイ・ムーディを演じた役者さんですね!彼も数多くのアイルランド映画に出演する俳優さんです。
>> ブレンダン・グリーソンが主役を務めた映画解説はこちら:映画『イニシェリン島の精霊』が難解だったので考察してみる
She moved through the fair
マイケル・コリンズが撃たれてしまうシーンで流れるのは、シネード・オコナー(Sinéad O’Connor)が歌うShe moved through the fairです。
歌っているのは違う歌手ですが曲の視聴はこちらで:She moved through the fair
このアイルランド民謡では、両親に結婚を反対され死んでしまった女性が恋人の枕元に現れたということを歌っています。
マイケル・コリンズがキティに出会ってすぐの時にも、キティがみんなの前で披露する形でこの歌を歌っているのですが、その時の歌詞はshe(=彼女)で歌われます。
最後のマイケルが撃たれるシーンでは、この歌詞がhe(=彼)に変えられて歌われており、歌がすでにマイケルの死を予感させるようになっているのです。
この曲が流れるシーンでは、毎回結末を知っているのでボロ泣きしてしまう・・。
マイケル・コリンズトレイル
今回は、ダブリンにフォーカスを当ててまとめていますが、マイケル・コリンズの出身地であるコーク(Cork)を調べてみると、マイケル・コリンズトレイル(Michael Collins Trail)なるものもあるよう。マイケル・コリンズの生家なども見ることができるみたいですね。
Michael Collins Trail:https://www.corkcoco.ie/en/visitor/michael-collins-trail
作中では、コークに到着したマイケル・コリンズが、仲間と一緒に「THE FOUR ALLS」というパブに向かうシーンがありますが、調べればコーク・クロナキルティーに全く同じ名前のパブがあるようです。(いつか訪れてみたい!)
『マイケル・コリンズ』が語るもの
映画最後のキャプションにもあるように、マイケル・コリンズは31歳だったといいます。
リーアム・ニーソン演じるマイケル・コリンズも引き込むものがありますが、実際に運動を指揮した人物がそんなに若かったとは思えず・・。31歳だったという事実を知って、また当時について思いを馳せてしまったりするのです。
『マイケル・コリンズ』を観た上でダブリンを探索すると、また少し違った風情でアイルランドを感じられるかもしれません。
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