留学準備で気にしておくべき手続きの一つに、役所で行う海外転出届(国外転出届)というものがあります。いわゆる「住民票を抜く」という手続きです。
ここでは、その海外転出届を出すことでどんな処理が行われるのかと、届出をする際のポイントをまとめています。転出届を出さない場合に罰則があるのかについても調べた結果をまとめました。
前提:海外転出届とは?
海外への移住を含め、1年以上日本国外に出張、駐在、留学する場合、住んでいる市区町村の役所に転出届(国外転出届・海外転出届)の届出が必要とされています。海外転出届は、渡航前14日前から提出が可能です。
海外転出届のメリット
海外転出届により、住民票の除票(=住民票を抜く)をすると、国民年金や国民保険、住民税の支払いの義務を取り去ることができます。海外渡航期間中の税金の支払いがなくなるため、その分資金を留学費用や現地での生活費に充てることもできるというわけです。
アイルランドへの渡航で住民票は抜くべき?
留学で行くか、ワーホリで行くかと合わせて、保険や年金等の扱いをどうするかによって、住民票を抜くべきか、抜かないでおくべきかは変わります。
海外転出届を出さないでもいい場合
アイルランドの学生ビザに関するまとめ記事にも書いたように、アイルランドへの語学留学では、申請により得られるビザの期間は最大8ヶ月です。
海外転出届は、1年以上の渡航予定の人が届出対象となるので、基本的にアイルランドへ観光ビザまたは学生ビザで語学留学を目的に渡航する場合は、海外転出届の提出は必要ないということになります。ただし、学生ビザでの語学留学の場合、最大2年まで延長が可能。滞在延長も意図して渡航をする場合は、海外転出届を出すべきということになります。
※ちなみに、海外転出届を出した人が、なんらかの理由で渡航後1年が経つ前に帰国となった場合、特に罰則があるわけではありません。帰国したら速やかに転入届を出しましょう。
海外転出届を出すべき場合
高等教育機関(大学や大学院など)への進学のため学生ビザで1年以上アイルランドに滞在する予定の人、ワーキングホリデーでの1年の滞在を予定する人は、海外転出届の届出が必要です。
これは個人の見解ですが・・
ワーホリ渡航の場合、ビザの期限である1年以内で出国と帰国をすることになるので、厳密には丸1年の国外滞在にならないところもあると思います。なので、どうしても年金の支払いをストップしたくないとか、国保を保持しておきたいなどがある場合、「海外転出届を出さない」という選択肢もあるのではないかと思っています・・。
この辺は状況によりさまざまだと思いますので、心配なら管轄の役所まで確認するようにしてください。
海外転出届を出さないと罰則はあるの?
ここまで見て、「1年以上日本国外に出張、駐在、留学をする予定があるけど、海外転出届を出さないとどうなるの?」と思った人もいるかもしれません。
住民基本台帳法 第五十二条には、「正当な理由なく規定による届出(転入届、転居届、転出届など)をしないと、5万円以下の過料に処す」といった内容の条文があります。*過料なので刑罰ではありません。
ただし、住民基本台帳法の条文を追っても、転出に関する条文はあっても、「1年以上海外へ」といったことを指すような文言は見つけられませんでした・・。
そもそも「転出」とは、「市町村の区域外へ住所を移すこと」という風に定義されていますが、「2拠点生活」という言葉も聞くようになった今、これまでの定義では括れない部分もあるのかもしれません。
いずれの場合も、転出の手続きは法律も絡むことです。もし、転出届の提出でお困りの場合は、該当の市区町村窓口で確認するなどで準備を進めるのが得策です。
どちらの場合も現地で在留届の提出を
海外転出届を出しても出さなくても、現地に到着したら、オンライン在留届を提出しましょう。現地の安全情報なども受け取れるので便利です。
外務省 オンライン在留届:https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet/index.html
届出時の注意点
マイナンバーカードの有効期限に注意
転出届の届出には、身分証明書とマイナンバーカードが必要です。
届出のタイミングでマイナンバーカードは無効化されるため、渡航前に銀行口座の開設を検討されている場合は、転出届の提出前に口座開設手続きするようにしましょう。
役所によってはワーホリは「旅行」?
役所によっては、ワーホリを「旅行」とみなし、日本に住所があるべきものとして、転出届を受理してくれない場合もあるようです。この場合は、住民票の除票もできず、税金の免除が受けられないようです。手続き前に役所のホームページなどでも確認しておきましょう。
届出前に歯科治療療も済ませておく
長期で海外に行く場合に、留学やワーホリでは、海外旅行保険に加入することになりますが、基本的なプランでは歯科治療のカバーがないものがほとんど。(歯科治療プラン付きは高い・・)日本で保険に加入している間に、治療も済ませておくのがベストです。
海外滞在中の国民年金
海外転出届を出すと住民票は除票され、年金払いの義務がなくなりますが、納めていない分については、そのまま0でカウントされ、将来の受給額も減ることになります。
(転出届を出してからの期間は「カラ期間」とされ、受給資格期間に含まれますが、年金額には反映されないことになります。)
将来の受給額が減るのが不安という人は、任意加入の形で、海外にいる間も年金を払い続けることも可能です。
参考までに、別パターンですが、たびわが大学を卒業してすぐニュージーランドにワーキングホリデーしに行った時は、海外転出届は出さず、年金の免除申請をしました。
海外転出届を出さない場合、年金については、免除申請という方法もあります。
アイルランドにワーホリに行く際、転出届の新住所欄に役所の人に言われた通り、「アイルランド」とだけ書いて届出をしたのですが、帰国時、年金処理の関係で「戸籍の附票」という書類を取り寄せた時、アイルランドではなく「アイスランド」に行ったことにされていたことが判明しました・・。
結果、役所にデータの修正をしてもらったのですが、上書き修正はできないらしく、今も記録には二重線で消されたアイスランドが残っています 笑
役所の書類でも混乱が起こるとは・・。こんなことは本当のレアケースであればいいなと思いますが、やっぱりアイルランドとアイスランドは混同されがちですね。
帰国時の手続き
日本に帰ってきた時は、逆に転入届の提出が必要です。パスポートで渡航履歴を確認してもらい、マイナンバーカードを復活してもらうことになります。
実際に行う手続きはそれほど複雑ではありませんが、役所により細かな点が違っていたり、人それぞれ、年金や保険の加入状況により取り扱いも違ってくることもあるかもしれません。手続きにあたっては役所に行って確認しながら進めるようにしてください。
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